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【UA×北大共同研究コラム :私たちが美味しいお菓子を食べ続けるには?】VOL.7 「森林 vs 放牧地」?自然と社会の炭素循環

    こんにちは。前回は、ウォーターフットプリントの研究に触れながら、食料生産に欠かせない水についてお話ししました。今回は、森林と放牧地における、炭素循環についてお話ししたいと思います。

    森林と二酸化炭素

    森林は温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の大きな吸収源です。木は光合成をすることで、大気中のCO2を取り入れて成長します。

    光合成をすることはほかの植物と同じですが、木が特徴的なのは、CO2を、人が利用しやすい木材・木質バイオマスに変えられる点です。

    最近、ニュースで「脱炭素社会」や「カーボンニュートラル」という言葉を見かけたことはないでしょうか?

    これらは、社会全体でのCO2の排出量の収支をゼロにしよう、という取り組みです。この取り組みにおいて、木材や木質バイオマスは重要視されています。

    石油や石炭などの化石燃料の使用は、資源に限りがあることや、数億~数千万年前に地下に貯蔵されていた炭素を空気中に大量に排出してしまうことなどの問題があります。

    対して、木は数十年の単位で成長する持続的な資源です。木を燃やして出るCO2は、過去数十年でその木自身が吸収したものですから、そこでのCO2排出量の収支は理論上はゼロになります。木を植え、育て、資材や燃料として使う、循環型の「脱炭素社会」が期待されています。

    一方、牛を育てるために、森林を拓いて作られる草地や放牧地では、このような炭素の流れを作ることはできません。草地や放牧地には、森林ほど密に木が生えていないため、CO2の吸収量や貯蔵量は減ることになります。

    それでは、木を切って牛を育てることは「環境に悪いこと」になってしまうのかというと、必ずしもそうではありません。牛を育てる放牧地では、森林とは異なる炭素の動きがあります。

    放牧地での炭素のうごき

    放牧地では、牛が食べるための草が成長します。草が伸びる、牛が食べる、また草が伸びる、というサイクルを何度も繰り返します。草は光合成をすることで、空気中のCO2を牛の生育や成長に使えるようにします。

    牛の糞尿は、放牧地においては、虫や微生物により徐々に分解されます。一部は、虫や微生物の呼吸により、再びCO2となって大気に戻りますが、分解されにくい炭素は土壌に残り、蓄えられていきます(放牧の土壌と炭素については、第3回の記事もご覧ください)。

    草は、人が消化できないかたちで炭素を含んでいますが、牛はそこから、人が消化できる牛乳や肉などのタンパク質をつくることができます。

    つまり、放牧地で炭素は、大気(CO2) → 草 → 牛 → 土・大気・人…と移動し、循環しています。

    森林が、社会で必要とされる資材やエネルギーをつくって炭素を貯留・循環させるように、放牧地は、私たちが生きるのに必要な食べ物をつくって炭素を貯留・循環させることができるのです。

    自然の循環と社会の仕組み

    国際連合人口基金の報告書によると、2021年現在、世界人口は78億7500万人を突破し、昨年に比べ8000万人増加しました*1

    近代化以前のような、大規模に手を加えない自然のなかで食や資源を得る生活は、環境問題解決のために理想的かもしれません。しかし、社会全体でそのような生活に戻ることは、ほとんど不可能です。

    人口を支える食やエネルギーを持続的に得るには、森林や放牧地のような、人の手で適切に管理した土地の利用を中心に、自然の循環を最大限活用する新しい仕組みを作っていくことが必要です。

    私たちは、UAでの放牧における栄養循環の研究を通して、このような新しい仕組みをつくるための一つの事例をつくっていきたいと思います。


    ※1The State of World Population 2021

    (参考)
    2050カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略について 林野省
    農林水産分野における環境イノベーションについて 農林水産省