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生態系と地域社会を「再生」する観光の未来【The Regenerative Company:Regenerative Travel】

    リジェネレイティブアグリカルチャーを牽引する世界各国の企業を紹介し、その実践の最前線を伝えていく連載「The Regenerative Company」。第10回は、独自指標をつくることで、「生態系」と「地域社会」の両方に良い影響を与える旅のスタンダードをつくろうとしている「Regenerative Travel」について。

    本記事は、ユートピアアグリカルチャーが提供する、美味しさと情報を届ける定期便「GRAZE GATHERING」に同封される冊子「GG MAGAZINE」からの転載になります。

     

    2022年5月から開始した「GRAZE GATHERING」はリジェネレイティブな放牧の可能性を伝え、共に考えていく取り組みです。4週に1度、2,280円(+送料)でユートピアアグリカルチャーが育てた新鮮な素材(放牧牛乳800ml,放牧牛乳ヨーグルト800ml,平飼いの卵8個入×2パック)と、地球と動物と人のより良い環境作りを目指す活動の報告、リジェネレイティブアグリカルチャーに関するコンテンツ記事をお届けします。

     

    ▷GRAZE GATHERINGの詳細・お申し込みはこちらから

    https://www.utopiaagriculture.com/products/graze-gathering/

    新型コロナウイルスのパンデミックを経て世界中の人々が再び移動を始めるなか、より環境によい観光のありかたが模索されています。そのなかでもグリーン・ツーリズムやサステナブル・ツーリズムに続いて近年注目されているのが、「リジェネラティブ・ツーリズム」や「リジェネラティブ・トラベル」です。

    例えば、ニュージーランドの企業・技術革新・雇用省(MBIE)はリジェネラティブ・ツーリズムへの移行を「観光に関する政府のビジョンの核」と位置づけています。ハワイ州観光局日本支局と旅行会社大手エイチ・アイ・エスは2022年9月、リジェネラティブ・ツーリズムを促進するための覚書を締結したと発表しました

    「単純化して言うとすれば、『グリーン』はダメージを減らすこと、『サステイナブル』はネットニュートラル(正味ゼロ)を目指すこと、そして『リジェネラティブ』はもっとよくしていくことです」と、リジェネラティブツーリズムを推進する予約プラットフォーム、Regenerative Travelを共同創業したアマンダ・ホーは話します

     

    「リジェネレイティブ」を計測するための独自指標も策定

    Regenerative Travelの創業は2019年。経済的な利益だけでなく、社会や環境といった公益を重視するベネフィット・コーポレーションという企業形態をとるスタートアップとして始まりました。同社が運営する予約プラットフォームには、2022年末時点で世界各地にある約50のラグジュアリーホテルが掲載されています。その共通点は、社会と環境に良い影響を与える取り組みがなされていることです。

    例えば、ネパールのタイガー・マウンテン・ポカラ・ロッジ(Tiger Mountain Pokhara Lodge)は、責任のある資源利用はもちろん、地域の森林再生に取り組む「Community Forest User Group」への支援を通じて竹やコキア(ほうき草)、バナナの木などといった換金植物の植林に取り組んだり、旅行者が地元の学校に教育用品を寄付できる「Pack for a Purpose」などにも参加したりと、環境とコミュニティの両方への支援を続けています。

    また、スコットランドのアラデール・ウィルダネス・リザーブ(Alladale Wilderness Reserve)は、スコットランド北部ハイランド地方で再野生化の取り組みを進めており、100万本の植樹や泥炭の修復、キタリスや絶滅危惧種であるスコティッシュ・ワイルドキャットを放つなどの活動をしています。

    「再生とは、単に環境に良いとか持続可能だというだけではなく、生きるためのホリスティックなアプローチです」と、ホーは話します。「サステナブルからリジェネラティブへと移行するには、土地や人、コミュニティ、野生動物など、すべてのステークホルダーに豊かさをもたらすホールシステムアプローチが必要になります」

    単にサステナブルであるだけではなく、社会や環境にプラスの影響を与えていることを証明するためにRegenerative Travelが策定したのが「Regenerative Metrics」と呼ばれる独自の指標です。この指標の内容の全容は公開されていませんが、廃棄物や排水の処理方法からエネルギーの倫理、地元企業からの調達状況、炭素排出量や従業員の幸福まで29の項目が含まれているといいます。Regenerative Travelの掲載施設には、これらの指標に沿って毎月取り組みを自己申告することが求められています。

     

    「生態系」と「地域社会」の両方に良い影響を

    Regenerative Travel創業前、ホーはライフスタイル誌『Electrify Magazine』の編集長を務めていたほか、ジャーナリストとしてライフスタイル誌や旅行誌にかかわってきました。その当時から旅行が与える影響について関心を持ち、アフリカの反捕鯨レンジャーや極地の気候変動に関するドキュメンタリーなどの制作をしていたといいます。

    彼女がそうした活動の中で感じたのは、自分の価値観に一致するステイ先が見つけにくいという違和感でした。「生態系と地域社会の両方に良い影響を与えながら、没入型の体験を提供するホテルを見つけるのが難しかったんです」。これが、彼女がRegenerative Travelを創業するきっかけとなった。

    ホーのように、より公益にメリットをもたらす観光を提供するプラットフォームは増えてきています。例えば、ドイツのsocialbnbは宿泊を通じて社会的、環境的なプロジェクトを支援できるプラットフォームです。宿泊先のページには自分の宿泊費がどのようなプロジェクトの資金になるかが明記されており、ゲストはプロジェクトを支える人々に現地で出合うこともできます。

    またフランスのHoliableは、エコフレンドリーな旅行先だけを掲載している予約プラットフォームです。滞在先だけでなく、レストランやアクティビティなども掲載されており、それが与える環境へのインパクトが詳述されています。

    こうしたプラットフォームを通じて旅行者が環境と社会によい選択をしていくことで、旅行業界を変革させていく必要があるとホーは話します。「すべてのホテルが再生可能あるいは持続可能であれば、旅行者はわざわざ選択をする必要もありません」とホーは話します。「しかし、この変化を加速させるためには、旅行者がそれを求めていく必要があるのです」