お菓子の裏側にある「社会課題」って何だろう?
私たちの暮らしの身近な存在である「お菓子」。 仕事の合間の息抜きに、大切な人への贈り物に と、さまざまな場面で生活を豊かにしてくれる存在 ですが、甘い一口の裏には、さまざまな社会課題 が隠れていることもあります。
例えば、チョコレー トの原料であるカカオの生産過程には、未だ過酷 な児童労働が問題になっていたり、バターや牛乳 などの乳製品の製造に多くの環境負荷が発生し ていたり。

お菓子は一方で、そんな甘くない社会課題の 現実を、ポジティブに解決しながら、私たち消費 者の一人ひとりが社会課題を「知り、考え、行動す る」きっかけを与えてくれるものでもあります。
今回は、そんな社会問題と消費者をつなぐ架け橋と して、お菓子づくりに取り組む国内外の企業を紹介します。
世界の奴隷労働に立ち向かうチョコレート
はじめに紹介するのは、カラフルなパッケー ジが目を惹く、オランダ発のチコレートブラン ド「Tonyʼs Chocolonely(トニーズ・チョコロン リー)」。近年は日本国内での取り扱いが始まりつつあり、百貨店や雑貨店で目にする機会も増えてきました。

ポップで可愛いパッケージの奥には、 チョコレート産業に深く根付く奴隷労働是正への メッセージが見え隠れします。 チョコレートづくりに欠かせないのが原料のカ カオですが、世界のカカオの約70%を生産する 西アフリカでは、約150万人の子どもたちが過酷な環境下で働いているとされています。
低賃金で 働かざるを得ないカカオ農家の生活を支えるた め、児童労働や奴隷労働が続いているのが現状です。
オランダ人ジャーナリストのトゥーン・フォン・デ・ ケウケン氏(通称:トニー)が、この現状に疑問の声 をあげて、「生産過程に奴隷労働一切なし」を掲げてつくったのが「トニーズ・チョコロンリー」の チョコレートです。
トニーズ・チョコロンリーでは、 奴隷労働を排除したサプライチェーンを自社で開 拓して構築。農家から公正な価格でカカオを購入し、安定した収入を提供することで、生活向上を支援しています。また、サプライチェーンを公開し、消費者が「奴隷労働に関与しないチョコレート」を選べる環境を提供することで、生産過程に100%奴隷労働を介在しないチョコレートが世界のカカオ業界の標準となることを目指しています。
パッケージに刻まれた「ちぎれた鎖」のマークは、チョコレート産業の奴隷労働からの解放を、いびつに割れ目の入ったチョコレート本体は、カカオ豆生産者らが直面する不平等な現実の世界を表しています。「おいしい」の奥にビターな社会課題へのメッセージを詰め込んだ一枚のチョコレートは、食べる人に気づきを与えてくれています。
多様な個性を活かしてつくる
日本にも、国内の「雇用問題」に取り組むチョコレート会社があります。国内各地に店舗を構える「久遠チョコレート」では、日常的に楽しめる価格帯で高品質なチョコレートを提供しています。
看板商品の「QUONテリーヌ」は、150種以上の多彩なフレーバーを揃え、必要以上の油脂を加えない、純度の高いピュアチョコレートを使ったチョコレート本来の風味を楽しめる味わいが人気です。
高クオリティのチョコレートが人気を博している久遠チョコレートですが、その製造過程では、様々な個性をもつ人たちが貢献しています。
働く従業員の776名のうち、443名が障害者手帳を保有しています。彼らは、それぞれの個性や特性を活かして、ショコラティエとしてチョコレートの製造を担っています。
作業工程では、一人ひとりの個性・特性に合わせて、作業内容や機械の動かし方を変更するなどの工夫を凝らして、誰もが働きやすい環境づくりに取り組んでいます。
久遠チョコレートの代表・夏目浩次さんが、今のような雇用環境を作り出した背景には、障がい者雇用におけるアンバランスな現実がありました。障がいを持つ方の多くは、就労支援施設で作業を行い、時間やでき方に応じて工賃を受け取りますが、平均月収は全国で1万6,507円(厚生労働省)と、最低賃金を大きく下回る数字です。そんな実情を知った夏目さんは、障がいを持って生きる方に最低賃金を保障することを目指す中でたどり着いたのがチョコレートの製造でした。

一つひとつの作業が単純であるがゆえに、製造工程を細分化することで、様々な個性を持つ方々の手によって高クオリティの商品を作ることに成功。そうして2014年、10年以上にわたる試行錯誤の末に久遠チョコレートは誕生しました。久遠チョコレートでの障がいを持つ従業員の平均月収は全国平均の10倍超。
これは障がい者雇用の世界では「あり得ない」とも言われる水準です。その美味しさが口コミで広がり、近年は全国約40店舗まで拡大し年商18億円を生み出す久遠チョコレートは、地域の障がい者雇用の重要な場になっています。「私たちがしているのは「経済活動」であるということ。経済とは語源に立ち返れば「経世済民」で、その本質は人を救う行為なんです。経済の力で利便性を高めたり物事を合理的にしたりして稼ぐことと、下を向いている人たちが胸を張れる世の中にしていくことは、両立できるはずだと考えています。」(夏目氏)
久遠のチョコレートは、経済活動とは本質的には人を救うことであり、それぞれの個性を生かし合いながら働く環境を作ることと、美味しさを消費者に届けることとは両立可能だということを教えてくれています。
「美味しい」のその先
日々、何気なく食べているお菓子ですが、その背景には様々な社会問題とのつながりを垣間見ることができます。
私たち、ユートピアアグリカルチャー(以下、UA)が目指しているのもまた、地球環境に悪影響をもたらさずに心から楽しめる、「地球にも動物にも人間にも美味しい」お菓子づくりです。

チーズワンダーやワンダーサンドの原料は、放牧で育った牛たちの牛乳と平飼い卵。北海道大学との共同研究を通じて、ふん尿を堆肥にして草木が健康に育つ土をつくったり、微生物を増やして土壌により多くの温室効果ガスを吸収させたり。
お菓子工場から出たイチゴのヘタ、スポンジの端などの菓子屑を鶏に給餌して、より栄養価の高い卵の生産と資源の循環を両立したり。環境に負荷をかけないだけでなく、むしろプラスの影響を与えるような農業、生産のありかたを追究しています。

「美味しい」だけではない、その先の想像力を育むような、そして実際にポジティブな影響を与えられるお菓子づくりに、これからもUAでは取り組み続けていきます。