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食べられる緑の空間づくり「フードスケーピング」について知る

ユートピアアグリカルチャーの盤渓農場の鶏舎の中では、鶏が食べられる植生を設計していますが、いま日本でも食べられる植物を取り入れて空 間をデザインする「フードスケーピング」が始まっています。

フードスケーピングとは、「フード(食べ物)」と「ランドスケープ(景観)」を組み合わせた言葉で、食べられる植物を活用した景観デザイン を指します。果樹やハーブ、野菜類を景観に取り 入れるアプローチです。

持続可能な農業や都市 緑化の一環として注目されており、自然との共生 や健康的な食生活の促進、コミュニティの活性化 にも貢献すると考えられています。緑に触れるだ けでなく、食して楽しむという、自然と私たちとの新しい関係性をつくり出しているフードスケーピ ングですが、今回は、国内でフードスケーピング事業を展開する「Green Neighbors(グリーンネ イバーズ)」の取り組みを紹介します。

都市の屋上で「実り」を体験する


国内初のフードスケーピング事業者として活動 するGreen Neighbors は、代表の篠崎ロビン夏子さんによって2022年に設立されました。

篠崎さんがフードスケーピングに魅了されたのは4年前、仕事で暮らしていたシンガポールでの経験がきっかけです。
篠崎さんは、シンガポールの商業 施設の屋上で、都会の中でバナナやゴーヤ、パパイヤなどの食物が実っている光景に衝撃を受け、 日本でも同じような取り組みを実現したいと感じたと言います。

「シンガポールは元々、国が戦略的 に緑を取り入れていて、アーバンファーミング(都市型農業)が注目されるようになった延長で、フー ドスケープという手法が当時現れ始めていまし た。高層ビルがそびえ立つ都会の風景の中、たく さんの食べられるものが実っている景色に魅了され、いつしか日本でもフードスケーピングをやってみたいと思うようになりました」 Green Neighborsでは、フードスケーピング を通じて地域住民が自然に触れ、コミュニティが 形成される場づくりを重視して、東京を拠点に国内各地で地域ごとの特性を生かしたフードスケー ピングを手がけています。

Green Neighborsが 取り組むフードスケーピングの意義を篠崎さんは次のように話します。「果樹やハーブ、野菜類を植 栽に取り入れ、ちょっと足を止めて、手を伸ばしてみたくなるような場を作っています。
物理的な空間としてのフードスケーピングが世界的には一般 認識ではありますが、Green Neighborsはさら にその後に『体験』の連続性をつくることで、よりフードスケーピングの世界を広げています。

具体的には、プログラムやワークショップを展開するこ とで、コミュニティを醸成し、食物はどうやってできるのかや自然環境について学ぶ機会を提供しな がら、人と人、人と自然の距離を縮めています」 代表的なプロジェクトのひとつには、神奈川県 川崎市のミュージックホール屋上でのフードスケー ピングがあります。

このプロジェクトでは、川崎駅 直結のビルの間に、地域の人々が訪れて楽しめる、 果樹を用いた緑の空間がデザインされています。 「地域の人たちがふらっと遊びに来れるような緑 の空間をイメージしました。屋外スペースを回遊 しながら、ブルーベリーやキンカン、イチジクなどの果樹を発見でき、都会の中にいながらも緑に包まれるような場です。川崎は工業地帯として有名ですが、実は昔豊かな果樹文化があったんです。

そのことを表現できるよう、『禅師丸柿』と呼ばれる、川崎で発見された日本最古の甘柿も植えています」(篠崎さん)オープン後には、季節の花の植え付けや、子どもたちが果樹の収穫を体験できるイベントも開催し、フードスケープとより深く関わり合う体験を生み出しました。「近隣住民の参加者の方が、イベントの後日に『フードスケープに植っていたフェイジョアを摘んでジャムにした』と伝えてくれたり、『近隣の小学生がキンカンの木にいた幼虫を毎週観察しにきて、アゲハ蝶に孵化したところを見届けた』という報告を聞いたり、自然の中で新たな発見を得られる地域の学びの機会になっているかなと思います。

また自然の変化を観察する中で何気ない会話が発生し、人同士の交流の機会も生まれています。自然や周りの人との交流が希薄になっていきている都会暮らしの中、このような場所の価値はどんどん高まっていくのではないでしょうか」(篠崎さん)

自然と人をつなぎ、人と人をつなぐ


Green Neighborsでは、フードスケーピング を設計する際に、視覚的な楽しさとともに、人々 の生活に溶け込む空間づくりを重視していると 言います。「景観とは見た目だけでなく、人がそ こで何かしらの活動をしたり、憩ったり、繋がっ ていくことも含まれます」と篠崎さんは強調します。

子供たちが手を伸ばしやすい高さに木を 配置したり、植物を体験としてどう活用するか をベースに樹種を選んだりと、その場所での人 の営みを想像しながらデザインされています。

また、地域コミュニティとの連携した場づくり も重視しているポイントだと言います。伝統野菜を守り続けている地域農家と植え付け教室 を開催したり、銭湯の店主が収穫したてのハー ブを使ってハーブ風呂をつくったりと、地域の 文化や資源を活かした取り組みも行っています。 「地域の人々が、自分たちの手でその場所を良くしていくという実感を持ってもらえることが何 より嬉しい」と篠崎さんは言います。

Green Neighbors のフードスケーピングは、緑の景観をデザインすることで、都市で人々が自然の「実り」を体感できる場をつくること。その営みは景観づくりにとどまらず、自然、人と自然のつながり、そして地域のコミュニティや人々のつながりを再生する、新しい都市の生活体験を生み出すものでもあるようです。

「近日、都市の真ん中、東京・恵比寿ガーデンプレイス内でもフードスケープを開始し、都市の生活者と自然との関係性を新たにつくり出すさまざまな企画を検討しています。
また、今後より環境やサステナビリティに重きを置いたプロジェクトを遂行していきたいと考えています。そこには効果測定という観点が非常に大事になってきます。研究機関とも連携し、生物多様性への影響やヒートアイランド現象抑止の効果といったところも検証していきたいですね。

また、サーキュラーのアイデアもどんどん取り入れていきたいです。
フードスケープの収穫物を近隣の飲食店に活用いただき、そこから出てきた生ゴミをコンポストにしてフードスケープに戻す。
さらにそこから次のメニューに活かせるような果物やお野菜を作り、余剰分は学校給食にと…資源の地産地消やコミュニティの活性化をしながら地域を循環するような持続可能なフードスケープを目指していきたいと思っています」(篠崎さん)