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リジェネレイティブなレストランのかたち

私たちユートピアアグリカルチャー(以下、UA)では、「地球と動物と人に美味しい放牧の実験とお菓子づくり」をミッションに掲げ、環境と動物に配慮した酪農や養鶏を通じて「リジェネレイティブ・アグリカルチャー(環境再生型農業)」を実践しています。

具体的には、牛のふん尿を堆肥にして土壌を豊かにしたり、放し飼いに近い環境で鶏を育てる鶏舎からたまごをとったりと、環境負荷を減らすだけではなく、土壌や生態系にプラスの影響を与えていくことを目指しています。

「リジェネレイティブ」は「再生」を意味する言葉ですが、「サステナブル」(持続可能)の枠を超えて、環境や地域にポジティブな影響を与えていく点が大きな特徴です。いま、この「リジェネレイティブ」(再生)の概念が、農業の枠を超えて、食の現場へと広がりを見せています。

近年、国内外で注目を集めるのが「リジェネレイティブ・レストラン」という新たな潮流。環境負荷や生態系を考慮した食の選択をしたり、環境再生に取り組む生産者を支援したりと、食を取り巻く環境全体を考慮することで「地球・動物・人の豊かさ」を追求する経営スタイルを指します。

土づくりからはじまった、レストランづくり


大分・湯布院のボタニカルリトリート「ENOWAYUFUIN」内のレストラン「JIMGU」のメニュー作りは、畑の土づくりから始まりました。自ら育てた、安全な食材を新鮮なままテーブルに届けるという「ファーム・トゥ・テーブル」の実践店として名高いアメリカはニューヨークの「ブルーヒル・アット・ストーンバーンズ」副料理長であったタシ・ジャムツォ氏がエグゼクティブシェフを勤めています。

アメリカから来日したタシ氏は、湯布院の地に農園を立ち上げ、地域の農家と交流を重ね、現在は野菜やハーブや果物を40品目・350品種以上育てています。タシ氏は毎日畑に足を運んで、レシピを考え、自ら育てた野菜たちのロスも限りなく少なくすることで、地域の素材が循環する仕組みをつくっています。

「JIMGU」で食を楽しむことは、その先にある「畑」の景色も想像させるような体験を提供してくれています。続いて、情報の開示という視点で、レストランの 外まで影響を与えている取り組みをベトナムからご紹介。

ベトナムはホーチミンで日本人オーナー が立ち上げた創作ピザレストラン「Pizza 4Pʼs」 は、英国に拠点を置く「サステイナブル・レストラ ン協会」のガイドラインを参照した評価システム をもとに「サステナビリティ・レポート」を作成し公開しています。

ゴミの量や、従業員の働き方、生態系の保全 に配慮した素材の使用など、様々なサステナビリ ティに係る項目を可視化。サプライヤーや従業員 だけでなく、お店を訪れるお客様にも読んでもら うことで、生産者について知ったり、サステナビリ ティについて考えるきっかけを提供しています。

食と環境の新しい関係


最後にご紹介するのは東京のイーストエリア、 日本橋馬喰町に位置する「nôl」。
2024年には、持続可能な取り組みを積極的に行うガストロノミー に贈られる「ミシュラングリーンスター」を獲得。「社 会と環境とのバランスの調和を目指し、レストラン が担うべき役割を考える」ことを掲げて、リジェネ レイティブなアプローチを実践しています。

nôl の初代シェフであり、ディレクターの野田 達也さんは、自らが生産者のもとへ足を運び、食 材・生産者に共感した食材だけを、素材本来の味 を生かしす形で提供してきたと言います。 肉や魚も、季節ごとの食材を使ったメニューが 提供されています。

キャビア目的に養殖され、廃棄されてしまうことが多いチョウザメの身を使っ たり、害獣として処分されてしまう蝦夷鹿を通 年メニューに加えるなど、フードロスや環境問 題に向き合った食材を厳選しています。

シグネ チャーメニューの一つでコースの最後に提供さ れる『ゴミのスープ』には、料理には使われなかった野菜の葉や根が使われています。通常 であれば捨てられてしまう素材たちが豊かな栄 養素の含まれたスープに生まれ変わり、食後の 胃を癒してくれます。

昨年5月には、「土から世界を再生する」をテー マに掲げた新体制を始動。地域農園との連携 により、店内に設置したコンポストを堆肥に利用 して作ったハーブや野菜を提供するなどの、循環と再生の取り組みにも力を入れています。

「今までが『持続可能』だとしたら、これからはさらに より良いものにしていかなければいけない。こ れまでnôlが考え行ってきた取り組みは決して特 別なことではなく、料理人として当たり前の所作 でもあるんです。今度はそれを皆さんと共に、越 境し新たな価値を創造していけたら」(野田さん)

リジェネレイティブ・レストランの 未来と私たちの役割


JIMGUやPizza 4Pʼs、nôlのように、環境や コミュニティにプラスの働きかけるリジェネレイ ティブ・レストランが各地で増えつつあります。

私たちに新しい “食の価値 ”を体感させてくれ るだけでなく、社会全体の消費や農業の在り方 を変える大きな力になっていくかもしれません。 「美味しい食事」は私たちに幸せをもたらして くれますが、そこに環境や地域をはぐくむ循環 が組み合わされると、さらに豊かな未来が見え てきます。

ユートピアアグリカルチャーの放牧 酪農や、nôlをはじめとするリジェネレイティブ・ レストランの実践は、その可能性を広げる取り 組みの一つと言えます。これから先、私たちの 選択や行動が、地球と社会をどのように育んで いくのか。ぜひ、“再生 ”というキーワードと共 に、食を楽しんでみてはいかがでしょうか。