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酪農によって生態系を拡張する?生態系から創る豊かな美味しさとは

    本日2022年2月18日はユートピアアグリカルチャーが活動を開始してから1周年となります。その祝うべき日に新たに、都市近郊型で多様な動物と植物による森の活性化実験のモデルファーム「FOREST  REGENERATIVE  PROJECT」の開始を発表しました

    そこで本記事ではプロジェクトメンバーであり、我々に「拡張生態系」というコンセプトをもたらしてくれた研究者の片野晃輔さんへのインタビューをお届けします。


    ”地球における人間の影響力が高まっている”ことが語られた前回の食べることで貢献する。人は豊かな生態系で、何を担うのか。なかでも人が介在することで環境を回復したり、生態系にポジティブな影響を与えるなど、新たな視点に驚きと期待を与えられました。

    「人間が諦めるのは僕は怠慢だと思っていて、まだまだやれてないことがいっぱいある」と軽やかに語る片野晃輔さん。

    片野さんは現在、フリーランスの研究者として活動されています。幼い頃から科学者を目指していたという片野さんは、中学から独学で研究をはじめ、なんと高校卒業後には米国マサチューセッツ工科大学 建築・計画スクール内に設置された研究所(MITメディアラボ)に所属。DNAや脳など生物学の研究に取り組みながらも、だんだんと興味のスケールが広がっていきます。

    「せっかく生き物に囲まれているのにインタラクションできていない状態に寂しさを感じて」

    転機が訪れたのはソニーコンピューターサイエンス研究所(以下、ソニーCSL)の舩橋真俊さんとの出会いだと言います。今回のテーマとなる「拡張生態系」とその応用である「協生農法」を学術的に構築し、提唱するまさにその人です。

    舩橋さんが率いる研究グループでは、拡張生態系の理論を応用して「協生農法」という多種多様な種を混成・密生させる農法の研究と社会実装などを行っています。

    画像:協生農法実践マニュアルから引用

    協生農法は、(株)桜自然塾 大塚隆による原形を元に、(株)ソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSL)   舩橋真俊による科学的定式化と検証を経て、実践と改良が重ねられています。

    「研究所にメールを送ったらまだ舩橋さんはアフリカにいるから待ってなさいと言われて。当時、舩橋さんは西アフリカにあるブルキナファソで砂漠化した地域でのプロジェクトに取り組まれていました。帰国したタイミングでやっと会えて、一緒に働きはじめたのが2年前の年末です」

    そして片野さんは約1年ほど、舩橋さん率いる一般社団法人シネコカルチャーに研究員として参画されました。

    画像:2019年から取り組んでいる六本木ヒルズの屋上庭園。https://www.sonycsl.co.jp/tokyo/12113/ より引用

    今回テーマとなる「協生農法」は主にたくさんの植物種を混生・密生させ、食糧生産と生物多様性の回復にアプローチします。

    協生農法の畑は「ワサワサしている」だけでなく、一見すると農業らしからぬ“3つのルール”があるそうです。それは、無農薬(農薬をまかない)、無施肥(肥料をいれない)、無施肥(耕さない)というもの。

    協生農法は砂漠化した地域での緑化と、食糧確保につながるものとして舩橋グループが研究、実践を牽引しています。一方で「人口が集中し社会活動が盛んな都市や人里の近くは、砂漠ほど生態系のロスがインパクトとして認知しづらいので重要視されにくい。徐々に絞め殺されてる環境という意味では喫緊の問題であるものの、都市は後回しになりやすい」と言います。

    そんな片野さんは、2021年春にシネコカルチャーグループを退社。研究活動、企業へのアドバイスや造園ユニットとしての造園プロジェクト空間設計など分野問わず活動の幅を広げられています。

    片野晃輔さん プロフィール

    Wild Scientist。1997年新潟生まれ 

    中学時代、母親の乳がんがきっかけで分子生物学に関心を持ち、DNAメチル化やIgE抗体を独学で学び、高校時代には企業や大学のラボを利用し個人で研究していた。高校卒業後、MITメディアラボ研究員に。同研究所のSynthetic Neurobiologyグループで組織内でのゲノムシーケンス手法開発に携わる。同研究所のCommunity Biotechnologyグループでは低コストかつ世界中どこでも自作し使用可能な実験機器、手法の開発や、生物学研究の民主化の研究を行う。

    帰国後、Sony CSLのSynecocultureグループ、一般社団法人シネコカルチャーにて拡張生態系の研究に携わる。

    現在は個人で「生命の連環を起こす」という理念を軸に研究活動、企業への助言や造園ユニットとしての造園/空間設計など分野問わず活動している。

    今回は拡張生態系や協生農法を参考事例に、生態系と酪農をキーワードにどんな未来が導かれるのでしょうか。ここからはインタビュー形式でお届けします。

     

    協生農法って何?
    三つ「ない」ルールと生物多様性の関係とは


    ーーまずは協生農法について、他の代表的な農法と比較しながら特徴を教えていただけますか。

    片野:農法と呼ばれるものは非常に多いと思いますが、代表的なものでは慣行農法、有機農法、自然農法があります。今回注目するのは環境再生型農業として注目される協生農法。 

    【慣行農法】例えばトマト農家、レタス農家と言われるように、同じ品種がずらりと並ぶようなモノカルチャーの大規模栽培を指します。定められた品質の作物を安定して生産するために多くの農家によって実践される農法で、一般的にイメージされる畑かと思います。

    【有機農法】慣行農法との大きな違い、化学肥料の使用をある程度もしくは完全に制限して有機性の肥料の使用を勧めている点です。施肥や耕起、農薬の使用に関しては慣行農法よりも環境負荷の低減を目指す方針が多く、モノカルチャーの畑も多くあります。

    【自然農法】先の二つに比べ更なる環境負荷の低下が期待できる農法です。実践者や派閥ごとに方針や具体的な手法が異なり、規模や生産強度が小規模であることが多いです。施肥や耕起、農薬使用の度合いを先の手法以上もしくは完全に制限する場合が多いです。

    【協生農法】協生農法は、農薬をまかない(無農薬)肥料を入れない(無施肥)耕さない(無耕起)、種苗以外のものを持ち込まないという条件下で生態系を構築制御、その環境で有用植物を栽培するという農法です。また、多品種を混生・密生させ、基本的に多様性が下がるアクションはしません。

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    ーー協生農法は意外と“やらないこと”が多いんですね。

    片野:そうです。放任すれば良いということはありませんが、実際にやってみると「思ってたより楽だった」という印象で、庭なんかは特に協生農法が相性いいですよ。実際に長野県にある御代田で知人宅の庭で生態系を構築する際、趣味の協生農法ゾーンを一部設けました。常に世話できる人がいなくても何かしら収穫できるような種を選んだり、住人が好きな山菜を取り入れることで収穫と世話がリンクする関係性を意識しました。

    片野:協生農法が目指すところは、生態系の構築と食料生産を両立させることなので、周囲の微生物や昆虫類などの多様性を下げないことが重要です。そのための制約条件が無農薬、無施肥、無耕起なんです。

    ーー肥料がなくても、野菜や果実は育ちますか?

    片野:無施肥でも育ちます。その環境で育つような有用植物を選定し、配置を工夫することで養分や水分など、植物の生育に必要な要素のフローが生じるようにマネジメントします。協生農法の砂漠での実践でも食料生産ができています。収穫時期などを考慮して一年中何かしら収穫できるように計画することもできます。

    また生態系という観点では、野菜や果実などの植物だけでなく、微生物や昆虫なども含まれます。

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    ーー肥料が生態系に及ぼすデメリットは何ですか。

    片野:農薬や肥料が悪いかというと、そうではなくて。早く収穫したい、味を濃厚にしたり、そもそも栄養が少ない土地で食糧を作るためだとか、目的に応じて必要なものです。

    デメリットとしては、肥料を入れると「富栄養化」と言って、栄養が異常に濃いエリアができてしまいます。これは自然状態だとあまりない状態のため、負のフィードバックが起きます。イナゴやアリなど害虫の大量発生がイメージしやすい例かと思いますが、生き物が住む余地があって、栄養があって、多様性が低いと単一種が爆発的に増えるリスクが高まります。また、生物が利用しづらい成分が蓄積するリスクや、河川や海の生態系を汚染することが挙げられます。

    ーー肥料によって、結果的に生物多様性を下げてしまうのですね。続いて、耕さないのはなぜですか?

    片野:最近だと不耕起栽培とかも増えていますね。耕すと土がほろほろになって、水分が失われて乾燥します。植物があったところには根のカスなどが残っていて、自然環境だと虫や微生物に分解されて隙間ができます。この隙間さえあれば、空気と水が入ってくるから耕す必要はありません。慣行農法では肥料を混ぜて生育を早めるために耕しますが、これが結構な環境負荷になります。表土の構造は破壊されるし、本来存在しない量の肥料が地中に入ることで栄養が過多になる。深さが必要な植物などを生産する場合は、初期造成の際に畝立てや地形を工夫すると良いです。

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    片野:生態系側にとってデメリットな状態は食料生産の持続を難しくするので、生態系のクオリティーが下がってしまうことはやらない

    ーー協生農法のもう一つのキーワードである混成・密生について、どのような効果があるのでしょうか。

    片野:協生農法は生態系の構築と食料生産を目指します。なので、生産者側が食料を常に入手できる状態にし、それが生態系の構築と直結することを目標の一つにします。空間を最大限利用すること、つまり様々な形状の植物が混成し密に育つことで空間あたりの生産量、多様性を高めることができます。

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    片野:いろいろな野菜や果実、ハーブ、スパイスを収穫したい場合、基本的には多品種を栽培します。品種と言っても、同じジャガイモのなかでの種類ではなく、そもそも遺伝子の距離が離れてる別の種という意味です。見渡す限りほぼ食材みたいな状態を実現することも可能です。詳しい農法についてはソニーCSLのホームページにも協生農法マニュアルがあるのでぜひ読んでみてくださいね!

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    テーマは生産性と環境破壊のトレードオフからの脱却


    ーー協生農法は農家として生計を立てるというより、あくまで生活に必要な食糧を得る方法なのですね。

    片野:ブルキナファソなどの例を見る限り、生産者の生活に必要な食料の生産はもちろんですが、市場に流通させるだけの生産強度も実現できるようです。収穫のしやすさや収益プランもデザインに入ります。大抵の場合、他の農法では生産強度や生産性を上げて儲けようとすると、生態系が犠牲になるというトレードオフになってしまいます。

    マーケットの観点でいうと、日本をはじめ先進国で農業用に整備された土地があって、専業農家がいる環境において協生農法はビジネス的には越えなければいけない壁があるかもしれません。先進国と表現しましたが、環境負荷に配慮して動こうとしたはずが、先進国の環境ではなかなかフィットしない。こうした状況の先進国は、環境後進国と言えます。

    ーー環境後進国ですか…!

    片野:はい。協生農法は基本的に少量多品種で混成密生、そのとき取れるものを活用することが前提になります。ですから、収穫できた食材を価値化する努力は必要になります。どうやって使うのか、どう調理すれば美味しくなるのか、どうすれば売れるのか調べたり、学んだり……生態系の構築と食料生産を両立する上で必要なアクションです。

    ーー料理や食べ方などの工夫は、人の創造性というか、努力が求められるんですね。

    片野:色々な有用植物を料理や暮らしに活用する、そうした活用多様性がないと、多様性と生産性の接続はできません。生産性と多様性を上げる、両方をつなぐ能力が人々の間でまだ育っていないのが現状ですね。

    めちゃくちゃ甘くて味濃いトウモロコシって、もう絶対うまいじゃないですか。こういう研究に携わると食べながら、「環境負荷の味だ、かみしめろ」って頭をよぎるんですよ。負荷をかけたぶん味わわなきゃいけない。美味しいのは嬉しいけど、そのために環境に負荷がない方法があるならそっちを模索したい。

    ーーそうですね。協生農法で作ると、味はどうなりますか?

    片野:個人の好みもありますが、ニンニクやアスパラ、果物、ハーブ類、お茶は最高でした。パクチーはめちゃくちゃ強烈な味になって驚きます(笑)。ルッコラは辛みが増して僕の場合は「美味しいけど辛くて一枚でギリッすわ」「オリーブオイル欲しいかも」みたいなのはよくありますね。香りや繊細な風味を楽しむ食材は楽しみ甲斐があります。

    エビデンスをとる実験では、お茶の木で比較した研究結果が出ています。生物間の相互作用が増えるので、有用な二次代謝物が多様に生産されるという結果が得られていました。分かりやすい部分では何かっていうと、慣行農法のものに比べて香りが豊かになるし、味の複雑性も増していると感じます。周辺に他の生き物がわんさかいると、生物間のコミュニケーションのために代謝物も色々必要になってくるんですよ。虫に食べ尽くされないように香り強くなったりとか。

    ーーより美味しくなるものもあれば、ちょっと工夫が必要な素材もあると…。

    片野:あるものをあるまま食べるだけが食の楽しみ方ではありませんし、嫌なもの、美味しく食べたいものがあるなら加工しちゃえ、というマインド。料理の文化はそのためにあると思うので。

    片野:今よりもう少し色々なものを食べる土壌ができたら、もっと食文化が多様化すると思ってて。そこは個人的にワクワクするところです。

     

    酪農×拡張生態系の可能性。事業としての価値化における課題とは


    ーーこれからユートピアアグリカルチャー(以下、UA)で一緒に実験に取り組むきっかけはなんですか?

    片野:独立後、協生農法の基礎になっている拡張生態系の農業以外の可能性を模索したくなり、ランドスケープや造園系の案件を探していました。建築家の大野友資さんと知り合ってプライベートプロジェクトをご一緒させてもらったのがきっかけでUAのお話を伺いました。

    「酪農、めちゃくちゃ大変だぞ」と思ったと同時に、生産から加工まで見据えて色々なお菓子を作ってる企業、かつ環境再生型の酪農を目指していると聞いて、「だったらやりたい!」と思ったのも本音です。自分の中でこのプロジェクトを通してもう少し拡張生態系×●●の模索ができそうな感覚もありました。

     

    ーー拡張生態系。以前にインタビューで伺ったことがあります。

    拡張生態系:人間が積極的に関与することで自然状態を越えて生態学的な全体最適化がなされる関係性として舩橋真俊氏が提唱。例えば、繁茂したハーブを収穫することで他の生物の住処が作られ多様性が維持または向上するなど等、人間による「拡張」として捉えられる。

    協生農法:多種多様な植物を混生・密生させた生態系の営みの中で食料生産を行う。収穫しながら生物の多様性を豊かにする、拡張生態系の農業的アプローチのひとつ。

     

    片野:それこそ、ものづくりや飲食をやってる人たちは先駆者になれるフィールドですし、生物多様性を社会的に価値化できると思うんですよね。

    写真:ユートピアアグリカルチャーでは平飼いの養鶏場と、放牧で酪農経営をし、採れた卵とミルクでCHEESE WONDERのチーズケーキを作っています。

    ーーUAではどういった取り組みができると思いますか。

    片野:まずはランドスケープの観点から着手しています。鶏舎や牛舎の周辺にどんな木や植物を植えようか、地図を見ながら植栽計画のデザインを作っているところです。多品種を植えるので、中には飼料として与えることができる植物も導入できます。

    ーー飼料などの実証実験ができるのでしょうか。

    片野:様々な種類の植物などの飼料を食べたり触れ合うことで家畜の腸内細菌が豊かになるという研究結果はいくつか発表されており、そうした結果を参照したマネジメント及び植栽計画は実行できます。学術的な実験という意味では、腸内細菌が豊かになったら栄養の吸収がどうよくなるのか、病気の抑止にどの程度繋がるのか、味はどう変わるんだっけ、とか。UAの事例を見て一緒に研究したい、研究可能性を感じるという人が増えたらいいな、という願いを込めて準備しています。

    ーーUAは北海道大学と共同研究をしているので、専門家の視点で興味を持ってもらえたら嬉しいです。

    片野:生態学的な研究で土地の初期造成から着手できる機会は少ないので、今回のような民間事業きっかけで研究者が自然と仲間になる構造は理想的だと思います。それだけでなく、いつかコラボレーターが現れたら、この場を活用できるような植栽になっているっていうのは、今目指しているイメージではありますね。また、酪農と拡張生態系の事例はまだ聞いたことがないので、その可能性にも期待して段階的に実践できるビジョンを考えています。

    片野:環境や生態系って、保護するだけじゃ駄目なのかと聞かれるんですけど、拡張生態系には「拡張」するための人間の主体的なアクションが不可欠です。

    片野:人間にある程度のエゴがあるわけですよ。文化的な生活をしたい、発展もしたいとか。じゃあ環境への負荷を下げていくような、環境にとっても嬉しい発展の仕方って何なのか。前向きな発展というのは、人間の積極的な関与によって自然に生態系ができる状況や関係性が生まれることじゃないかと

    ーー人間も生態系に組み込まれていると考える。

    片野:酪農関連の論文をいくつか見ると、低密度の放牧は生態系のクオリティーが25%ほど上がると予想される一方で、牛乳の生産量を上げるために家畜の数を増やすとなると、生態系のクオリティーはかなり下がってしまいます。

    ーーあちらを立てれば、こちらが立たず。トレードオフから脱却する糸口はあるのでしょうか。

    片野:はい。まず育てる牛の頭数でいくと、牛ってすごく量を食べるので牧草の再生速度に合わせて頭数に制限がかかります。これでは単純に生産乳量が減る状態です。

    仮説ではありますが、牛にとって有用な植物で構成される高密度な生態系がつくれたら牧草に比べて頭数の制限は緩和出来るのではないかと考えています。さらに人のマネジメントによってそうした有用種の増えていくスピードが加速してる状態、つまり酪農✕拡張生態系になれば可能性はありそうだと。

    ーーこうした取り組みによって、ミルクや卵の変化が、お菓子の美味しさに繋がったら素敵ですね。

    片野:美味しさを追求してるところが僕はいいなと思っていて。事業自体がうまくいってて、加工に対して配慮をしていて、生産にも配慮をし始めようとしてる人たちって、アカデミックなコミュニティからは意外にアクセスできないところにいる。今回、すごく奇跡的なブリッジが起きつつある。

    ーー事業会社との取り組みについて、研究者の視点でどういった意義がありますか?

    片野:世の中でスピードが速くアクティブな存在は民間事業者だと思いますが、そうした社会での生物学、生態学研究の活用はまだまだ過渡期です。生態系と事業の関係性については、研究でも分かってない部分が多いんですよね。事業を通して生態系を拡張することのインセンティブや納得のいく関係性を今後見つけられたらと思います。

    生物多様性の維持向上と、自分たちの事業の採算性を同時に上げる取り組みはまだまだ実験が必要な段階。といっても研究室の規模だけではなくてもう少し事業を通した社会実験的な規模で取り組んでいく必要があります。仮説は立てられるけど、じゃあ当事者として価値化を得意とする人たちってなかなか出会えない。こういう話ができるだけでも、すごく健全な関係性です。

    個人的には社会的インパクトのある研究を考えたり、思いつく関係性がUAと築けてきたので燃えています!

    ——今までにない価値になりそうです。事業としてやるからこそ、より世の中にインパクトを与えられる領域、挑戦しがいがあります。プロセスをお客様に伝えながら、価値を高めていけたらと思います。これからもよろしくお願いします!

    リンク集

    一般社団法人シネコカルチャー https://synecoculture.org/

    ソニーコンピュータサイエンス研究所・シネコポータル https://www.sonycsl.co.jp/tokyo/12113/  

    原稿内に使用したイメージイラスト1~5は『協生理論学習キット』より引用
    https://www.sonycsl.co.jp/wp-content/uploads/2020/08/6e9c0166ff759ee09dd3bcfe6d678175.pdf