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レストランの「インパクトレポート」の意義って?

いま「よい企業」の基準が大きく変わりつつあります。それまでの経済的利益の追求だけでは なく、自然環境への配慮、従業員の満足度やエン ゲージメント向上など、さまざまな関係者・ステー クホルダーから捉えて「よい」かどうか
が重視されるようになりました。

その一例として挙げられるのが、B Corp(B Corporation)という社会や環境に配慮した公益 性の高い企業に対する国際的な認証制度の存在 です。日本国内でも、上場企業ではシグマクシス、 過去にUA Journalで紹介した企業ではファーメ ンステーションやovgoなどの計41社が認証を 取得し、少しずつ認知度が高まりつつあります。

また、自社の取り組みを開示し、透明性を高め、 各ステークホルダーとコミュニケーションを図る ために「インパクトレポート」や「サステナビリティ レポート」を発行する企業が増えています。
インパクトレポートとは、企業や団体が、どのような社 会課題の解決に取り組んでおり、解決のための 仕組みの構築と実践を行い、成果を生み出した のかを定量的に可視化したレポートのことを指します。

事業に関わるさまざまなステークホルダー に向けて制作されており、先ほどのB Corpの認 証企業のなかでもインパクトレポートを制作する 企業が多く存在します。こうした取り組みをしてい るのは企業だけだと思われる方も多いかもしれま せん。しかしいま、レストランがインパクトレポー トを発行する事例が少しずつ出てきています。

例えば、ミシュランガイド東京2021年度版から3つ 星を獲得し続けているレストラン「レフェルヴェソ ンス」は、2023年12月に日本のレストランとして 初めてインパクトレポートを発表。レポート内で は、食材調達源、電力・ガス・水の使用量、ごみ排出量、女性スタッフの割合などを公開。レフェル ヴェソンスは目指す姿として「リジェネラティブレ ストラン」を掲げられています。

私たちユートピア アグリカルチャーも、酪農による環境再生型農業 (リジェネラティブアグリカルチャー)に取り組んでお り、目指す未来を共有する部分があります。

 

きっかけは、サステナビリティへの取り組みの可視化


もうひとつ事例として注目したいのが、ベトナムはホーチミンで日本人オーナーが立ち上げた創作ピ ザレストラン「Pizza 4P’s」です。2023年11月に麻 布台ヒルズに国内店舗として初めて出店した同レ ストランは、「Make the World Smile for Peace (平和のために、世界を笑顔に)」をビジョンに掲げて おり、2021年からサステナビリティレポート(=イン パクトレポート)の発行に取り組んできました。

そのきっかけは2018年にさかのぼります。Pizza 4P’s はコアバリューのひとつに「コンパッション」 を置いており、サステナビリティ戦略と深い関係 がある、と同社の久保田和也氏は次のように語ります。

「コンパッションは日本語では慈悲という意味 で、Pizza 4P’sでは『共に生きるための思いやり の気持ち』と定義しています。サステナビリティを 追求するのであれば、地球の健康や健全な社会、 人々への配慮に思いを馳せることになるので、自 ずとパッションが溢れ出るはずです。むしろコン パッションのないサステナビリティは、形骸化した 名ばかりの活動になる可能性があるので、そこの 関係性の理解は特に重要だと考えております」

2018年当時、Pizza 4P’sはチーズから出る食品 ロス「ホエー」の再利用やプラスチックストローの 廃止などを皮切りに、会社として「これからサステ ナビリティを推し進めていこう」という意志はあっ たものの、自分たちの現状を可視化するのに苦戦していたといいます。そこで取り組んだのが、英 国に拠点を置くサステイナブル・レストラン協会の ガイドラインを参照した評価システムの作成であ り、その結果を「せっかくなので社外向けにも公開 しよう」という流れでサステナビリティレポートの 制作が始まった、と久保田さんは振り返ります。

「前述のガイドラインを用いて各店舗や部署の 担当者にヒアリングを行い、質問リストに回答して もらうことで、会社全体としてのサステナビリティ スコアを可視化していきました。その結果、2019 年末に実施した調査では、Pizza 4P’s のサステナ ビリティスコアは会社全体で『34%』という結果 でした。100%が最もよい状態のため、誇れるも のではありませんでしたが、例えば『従業員の公 平な評価・処遇』というカテゴリーでは、79.8%と いう高いスコアが出た一方、『水産資源や生態系 の保全に配慮した魚介類の使用』というカテゴ リーでは15.4%という低い結果になっていまし た。この結果をもとに、会社としてどの分野に どう注力すべきかについて検討できたことがと ても重要だったんです」

従業員の意識が変わるきっかけに


企業がインパクトレポートを発行する際、主 な読み手として想定されるのは投資家ですが、 Pizza 4P’s の場合は投資家、サプライヤー、従 業員、NGOといったあらゆるステークホルダー のみならず、お店を訪れる一般的なベトナム人 が読み、サステナビリティについて考えるきっ かけを提供したかったそうです。

2021年以降、毎年レポートを発行するなか で各ステークホルダーにどのような変化が生ま れていったのでしょうか? 久保田さんは「いち ばん大きな変化は、従業員の意識が変わった こと」だと語ります。

「最初は『仕事が増えた』と捉えられていた 側面もあるのですが、レポートをつくり始めて から、ゴミの量にしてもエネルギーにしてもす べて数字で可視化されるので、なるべく減らそ うという意識が芽生え、そのための方法を積極 的に提案するパートナーも現れ、かなりポジティ ブな流れがつくれました。また、外からのフィー ドバックがあると、自分たちは環境や社会に対 してここまで取り組んでいるんだ、という自信 が生まれ、自分たちの活動や会社の姿勢に誇 りを持てるようになっていったんです」 また、レポートが生産者やサプライヤーの方々 が認知されるきっかけになったり、新規パート ナーや取引先を探す際に活動内容を伝えやす くなったりといった効果もあったそうです。

そのほか、環境意識の高い企業からの問い 合わせ増加、ベトナムの人気Webメディア『ベトセトラ』のサステナビリティアワード受賞、 WWFからのコラボプロジェクトの依頼等、さま ざまな波及効果が生まれていったそうです。こ うした一連の取り組みの意義を久保田さんは 次のように振り返ってくれました。

「レポートの作成や環境配慮型の資材への 変更、トレーサビリティの徹底、配慮ある食材 調達への変更などでコストがアップすることは 多々あり、苦労の連続ではありました。しかしな がら、透明性を担保し、環境や社会、人々にとっ てコンパッション溢れる活動をしていることで、 お客様は自然とそういったお店に行きたくなる と思いますし、自然と家族や友人に話をしたく なりますし、そうしたお店に人は集まるはずで す。売上や利益もそれに伴ってついてくるものなのだと考えていますね」