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地球・動物・人に“美味しい” 牛乳の未来って?

    朝ごはんのお供であったり、学校給食に欠かせなかったりと、牛乳は私たちの生活のとても身近なところにある飲み物です。しかし、気候変動や食糧危機の問題への対策を迫られるなかで、今までは当たり前とされてきた生産や消費のスタイルが大きく変わろうとしています。

    ユートピアアグリカルチャー(以下、UA)としても、お菓子づくりに欠かせない原材料である牛乳のあり方をこれまでも考えてきました。今回は、牛乳を取り巻く環境やUAでのお菓子づくりの実践を振り返ることで、地球・動物・人に“美味しい”牛乳の未来に迫っていきます。

    本記事は、ユートピアアグリカルチャーが提供する、美味しさと情報を届ける定期便「GRAZE GATHERING」に同封される冊子「UA JOURNAL」からの転載になります。

     

    2022年5月から開始した「GRAZE GATHERING」はリジェネレイティブな放牧の可能性を伝え、共に考えていく取り組みです。4週に1度、2,280円(+送料)でユートピアアグリカルチャーが育てた新鮮な素材(放牧牛乳800ml,放牧牛乳ヨーグルト800ml,平飼いの卵8個入×2パック)と、地球と動物と人のより良い環境作りを目指す活動の報告、リジェネレイティブアグリカルチャーに関するコンテンツ記事をお届けします。

     

    ▷GRAZE GATHERINGの詳細・お申し込みはこちらから

    https://www.utopiaagriculture.com/products/graze-gathering/

    牛乳が食糧危機を解決に導く!?

     

    未来において食糧問題が深刻化することが予想されるなかで、栄養食品としての牛乳の重要性が高まっています。牛乳は生命維持のために不可欠な栄養素であるたんぱく質、脂質、炭水化物に加えて、カルシウムなどのビタミンを豊富に含んでいるにも関わらず、コンビニやスーパーで比較的安価に手に入れることができる食材として注目されています。

    さらに、牛を育てるための飼料のほとんどは、人間が摂取できないもので構成されています。人間に食べられない資源を高品質な人間の食べ物に変えることで、食糧危機の解決に貢献するはずだ、と考えられています。栄養素による食品評価の世界的権威であるアダム・ドレノフスキー博士は、牛乳・乳製品、肉の温室効果ガス排出値は100g当たりで算出すると高くなる一方で、100kcal当たりでは非常に低いとも指摘しています

     

    地球・動物への優しさを考える

     

    牛乳は私たちの健康な食生活を支えますが、地球や動物への影響はどれほどなのでしょうか。私たちの食卓に並ぶ牛乳の多くは、近代酪農の考え方に基づいてつくられています。最先端のテクノロジーや科学的な知見を用いて牛を育てることで、より効率的に牛乳を生産しようという考え方です。

    近代酪農の発展により、この10年間で見ても牛一頭あたりの乳量は12%ほど向上したといいます。私たちが安価で美味しい牛乳を飲むことができるのは、近代酪農の発展があったからこそです。その一方で、環境や動物への負担が大きいのも事実です。

    国連食糧農業機関の調査によると、世界の温室効果ガス排出量の14.5%を畜産が締めるといわれています。牛のげっぷに含まれるメタンは、二酸化炭素の約30倍の温室効果をもたらすからです。また、日本では農家の大規模化にともなって牛のエサである飼料を輸入に依存するようになりました。輸送の過程でも環境負荷がかかります。

    動物福祉(アニマルウェルフェア)の観点からも課題はあります。近代酪農では、牛たちはスタンチョン(牛の首の部分をはさんで繋ぐ道具)やチェーンでの繋ぎ飼いや、牛舎内での放し飼いで育てられます。その過程では、角を切り取るまたは根元から焼き取る断角・除角なども行われ、牛にはストレスがかかります。

     

    放牧を通じて牛の幸せと環境の回復を目指す

    メリットとデメリットを併せもつ牛乳ですが、地球・動物・人にとっての美味しさを考えたときに、その未来はどのようになっていくでしょうか。

    1つの方向性として注目されているのが、UAでも実践を試みている「山地での放牧酪農(山地酪農)」です。動物や自然との共生を実現し、環境の回復にも貢献する可能性のある酪農として注目されています。牛舎に牛を繋ぎ止めずに自然に近い状態で動物たちを育てる──。動物たちと山とがお互いに助け合って生きることのできる環境を人間の手で整備することが、山地酪農の思想の根本にはあります。

    放牧は牛の健康を最優先する酪農スタイルでもあります。UAが運営している放牧牧場では、健康な牛からは美味しい牛乳が採れるという考え方から、飼料である牧場の草の管理にこだわります。土が豊かになると、草も豊かになる。そして、草を食べた牛が元気になる。健康な牛からはいい牛乳が採れて、最後に人間が豊かになる。そんな循環をつくることを心がけています。

    また、山地酪農は環境や生態系を回復できるリジェネレイティブな酪農です。北海道大学で土壌や植物の栄養素循環を研究し、UAでの山地酪農の実践にも共同研究者として関わる内田義崇さんは山地酪農の可能性について、次のように語ります。

    「山地酪農は二酸化炭素を出しながら暮らす人類のライフスタイルをガラッと変えていくチャレンジです。いま私たちが真剣に考えなくてならないのは『持続可能な地球環境を守りながら食料を生産する方法』であり、その答えのひとつが『肥料がなくても育つ植物を最大限利用する』ことではないでしょうか」

    植物は光合成により二酸化炭素を吸収することが知られていますが、放牧を通じて土壌を豊かにすることで、その吸収量を増やせるのではないかと期待されています。牛や馬などの多様な動物が森で暮らし、草花を食べ、ふん尿をする。それは分解され、植物や微生物の養分となり森が育つ。その循環の中で生産される食料を人間が分けてもらう。地球・動物・人に優しい理想的な酪農のあり方だとUAでは考えています。

     

    地球・動物・人に“美味しい”未来の実現を目指して

    その他の可能性として考えられるのが、植物性代替ミルクへの転換です。最も身近な代替ミルクとしてはソイミルク(豆乳)が挙げられますが、その他にもオーツミルクやアーモンドミルクのような数々の種類が登場しています。代替ミルクは豊富な栄養素を含みつつ、地球への負担が少ない飲み物です。オックスフォード大学の研究によると、ミルクを生産する際の温室効果ガス、土地利用、使用水量のいずれにおいても代替ミルクは環境負荷を低減できると指摘されています

    牛乳ひとつとっても、その背景には社会や地球に関する複雑な問題が存在します。その解決は一筋縄ではいかないのも事実ですが、まずは身近なアクションからはじめることが重要ではないでしょうか。牛たちが暮らす牧場に足を運んでみる。放牧によって作られた牛乳を味わってみる。そんな身近なアクションの積み重ねが、地球・動物・人に“美味しい”未来の実現につながるはずです。

    UAでも放牧の美味しさと情報を届ける体験型パッケージ「GRAZE GATHERING」の展開や、リジェネレイティブな放牧を実践する「盤渓農場」の運営を通じて、普段はあまり意識しないかもしれない素材の裏側に触れる機会を増やすことに取り組んでいます。ぜひ今後ともリジェネレイティブな未来の実現に向けた活動にご注目ください。

     

    アダム・ドレノフスキー『Measures and metrics of sustainable diets with a focus on milk, yogurt, and dairy products.』

    酪農総合研究所 『直近10年を振り返って見る酪農の現状と課題とこれから』

    国連食糧農業機関 『Livestock solutions for climate change』