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「土と微生物」の秘密

    ユートピアアグリカルチャー(以下、UA)では、自社牧場で育てた牛や鶏から採れる放牧牛乳や卵を使ってお菓子づくりを行っています。

    放牧は食材の美味しさを突き詰めた結果たどり着いたアプ ローチでもありますが、同時に、食料生産をしながらも地球環境を回復するリジェネレイティブア グリカルチャー(環境再生農業)を実現するポテンシャルを持っています。そんな地球にも動物にも人にも優しいお菓子づ くりを実現する上で、最も重要なのは「土づくり」です。豊かな土壌は植物や動物に多くの栄養素や水分を提供するだけでなく、気候変動の原因となる炭素を吸収できます。

    今回は「土壌」に注目することで、私たちの豊かな暮らしと地球環境の未来を両立するアプローチを考えていきます。

    本記事は、ユートピアアグリカルチャーの商品に同封される冊子「UA JOURNAL」からの転載になります。

     

    豊かな土壌ってなんだろう?

     

    みなさんは豊かな土壌と聞いたときに、どのような姿を想像するでしょうか。農業や酪農において、良い土と呼ばれているのは栄養素や水をしっかり保持できる「黒くてふかふかした土」です。土が黒いのは、多くの栄養素を含んでいる証拠です。なぜなら、枯れ草や動物のふん尿などの有機物を微生物が分解したあとに残る「腐植」という物質が多く残ることで、土が黒くなるからです。

    また、ふかふかな土とは土壌粒子(土を構成する砂や粘土)がみっちりと詰まるのではなく、空間に余裕がある状態です。通気排水性がよく、栄養素や水分が循環しやすい特徴があります。

    さらに、このような豊かな土壌は、地球環境を回復するポテンシャルがあるとも言われています。近年の研究で、土壌は大気の2倍、地上に生える植物の3倍の「炭素貯留能力」を持つ、巨大な炭素貯蔵庫だと判明してきました。産業革命以降、炭素は大気中に大量に放出されるようになり、温暖化や気候変動の原因になっています。

    このような過剰に発生した炭素を植物は光合成の過程を通じて、有機物に変換します。それらの有機物は植物中に蓄えられ、土壌微生物が再び分解することで、炭素の状態に戻ります。その一部は大気中に放出し、残りが土壌に蓄えられるのです。つまり、栄養素が多く存在し多様な微生物が存在する土は、多くの炭素を吸収/固定することができます。

     

    放牧により食糧生産と環境回復を両立する

     

    では、豊かな土壌をつくるにはどのようなアプローチが必要なのでしょうか。栄養素の観点から考えると、化学肥料を使用すればいいと考えるかもしれません。しかし、肥料を用いて特定の栄養素を一度に大量に入れ込むことは、複雑な生態系のバランスを崩し、微生物が生きづらい環境・水や空気の保持しにくい環境をつくることにつながります。

    対して、豊かな土壌を作る上で重要なのが「耕さない農業=(不耕起)」と「輪作」です。耕すことは土壌の栄養素の分解を早め、貯蔵されていた炭素を大気中に放出することにつながります。また、異なる種類の作物を交互に栽培する「輪作」を実践することで、特定の栄養素や微生物が偏ることを避けて、土壌のバランスを保つことが重要です。

    UAでは、放牧酪農にて豊かな土壌やリジェネレイティブアグリカルチャーを実現しようとしています。牛や馬は牧草を食べることで草刈りの役割を担い、ふん尿を排泄することで土壌微生物に効率的に栄養素を提供します。そして、適切な数の牛や馬を放牧することで、牧場全体の栄養素の循環を最適化できると考えています。

    UAと共同研究を続けてきた北海道大学准教授の内田義崇さんは、この実験の全容について次のように語ります。「人口増加が地球規模の課題となる中で、食料危機と気候変動の両方に対処 することが重要です。放牧によるリジェネレイティブアグリカルチャーは、人間が食糧生産をするエコシステムの中で、環境負荷を下げる(回復させる)ための実験です。この実験が成功すれば、現状では食糧生産に向かない土地であっても、土壌を回復させ、食糧生産と環境回復を両立できる場所へと生まれ変わらせることができるはずです」

     

    土壌に還る衣服が実現する 循環のエコシステム

     

    さらに、このような土壌の分解や生産のメカニ ズムを活用することで、食の分野だけでなくファッションにおいても、私たちの豊かな暮らしと地球環境の未来を両立する取り組みを実現できるかもしれません。ファッション産業は、衣服の製造にかかるエネルギーや廃棄の観点から環境負荷が非常に大きい産業だと指摘されています。そんなファッション業界の現状に、土壌に注目することで変化を起こそうとしているのが衣服の製造から使用、廃棄/再利用までを廃棄ゼロで実現するアパレルブランドSyncs. Earthです。

    その最大の特徴は100%土に還る服を制作している点です。衣服の製造には、布地だけで なく縫い糸にまで、化学繊維が一切入っていな い天然素材を使用。100%天然であれば、微生 物や菌の力を活用することで土壌へと還すこと ができます。

    さらに、同社は「循環購入」という新たなライフスタイルの提案も行っています。循環購入は期限無制限のレンタルです。購入者は衣服を使用し終えたタイミングで、Syncs. Earthへと返却します。返却された衣服は同社が運営する自社農園で土に還します。ユーザーは衣服を通常購入をすることもできますが、循環購入することで2/3の価格で衣服を使用できるだけでなく、このような循環のエコシステムに参加できます。

    Syncs.Earthでは、衣服を製造する上で発生したわずかな断裁のハギレも土へと進している。

     

    誰かの日常を循環させるスイッチになる

     

    Syncs.Earth代表の澤柳直志さんは、プランドの実現したい未来について次のように語ります。「Syncs. Earthのミッションは、「誰かの日常を循環させるスイッチになる」ことです。衣服の購入という身近なアクションを通じて、地球 も自分も豊かになる循環のエコシステムに参加することができる。そんな仕組みやコミュニティをつくり、多くの人々に参加してもらうことで、社会の未来は変化していくはずです」

    UAでも、お菓子や放牧食材の販売による収益を豊かな土壌のために投資することで、みなさんの購買が、地球環境の再生へとつながる仕組みを設計していきたいと考えています。地球にも動物にも人にも優しい活動の輪を広げるための実践を、これからも続けていきます。